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■「うわさ」は人の評価まで変えてしまう力を持っている女性週刊誌の目次には、人の興味を引くタイトルが並んでいますね。 「○○、失恋で拒食症。女優生命のピンチ」「おしどり夫婦が離婚の危機」といったものですが、実際に記事を読んでみると、実はピンチでも何でもないことがあります。 「ロケで弁当を残した」だけの話が失恋で拒食症に拡大解釈されていたりしますが、似たようなことは身近でもよく起きています。 たとえば、課長と同じ課のOLが、喫茶店で一緒にいるのを見かけ、その話を「さっき、課長とAさんが喫茶店に一緒にいるのを見たんだけど」と同僚に伝える。 これを聞いた同僚は、それをまた別の同僚に伝えるのでしょうが、このとき話は正確には伝わらない。「課長とAさんが喫茶店で親しそうに話していたらしい」と、話はオーバーに表現されていることでしょう。 その同僚は、また別の同僚に「課長とAさんは、デキているらしい」と、さらに拡大解釈して伝えるといった具合に、話はどんどん大きくなっていきます。 うわさ話というのは、とかく伝わる過程で、どんどん大げさになっていくものなのです。このことは、実験でも確認されている。 心理学者のカール・メニンジャーが行なったもので、キング夫人に関するうわさをAからJまで10人の女性が、電話で次々に伝えていく実験です。 まず、Aは「キング夫人は、今日はどちらかへお出かけかしら。ご病気かしら」と伝える。 すると、それを聞いたBは、Cに「A夫人が、キング夫人は病気らしいと心配していたわ」と伝える。Cは「キング夫人が病気らしいわ。重くならなければいいけど」とDに伝え、DはEに「キング夫人が重病ですって。早くお見舞いに行かなきゃ」という。 さらに、EはFに「キング夫人がひどく悪いそうよ。Dさんが呼ばれたんですって」、FはGに「キング夫人が危ないらしいわ。 親戚の方も集まっているそうよ」、GはHに「キング夫人のことご存じ? もうお亡くなりになったのかしら」、HはIに「キング夫人はいつお亡くなりになったの」、IはJに「キング夫人のお葬式にはいらっしゃいますか?昨日お亡くなりになったんですって」と伝わって、ついにキング夫人は死んだことになってしまったのです。 たった10人の間を伝わるだけで、これです。このうわさ話の仕組みを利用すれば、小さなうわさをもとにして、大きなデマを作り上げることも可能で、自分でつくったデマではないから、デマだとわかってもリスクを負う心配もない。 たとえば、疎(うと)ましい同僚Bがいたとして、彼に関するちょっとしたうわさを流す。「Bが同僚のCからカネを借りているのを見た」といった具合の話だ。 そこから、「BはCにずいぶんお金を借りているらしい」→「Bはお金に困っているようだ」→「Bはあちこちに借金を頼んで回っている」→「Bはサラ金に追われて大変だ」と話が広かっていかないともかぎらない。 そんなうわさが上司の耳に入れば、Bの印象はずいぷんと悪いものになるだろう。 |
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