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■「低い声」で話せば大物に思われる救急車で運ばれたことがある人ならわかるでしょうが、駆けつけた救急隊員は、怪我人や患者さんに向かってなるべく低い声で「大丈夫ですか?」「落ち着いてください」と語りかけます。なぜなら、低い声には相手を落ち着かせる効果があるからです。 人は興奮すると、高い声を出します。よく緊張したときに「声がうわずる」といいますが、まさに「上擦る」の字義通り、高い声になってしまうのです。そのため高い声で話すと、相手は興奮や不安を覚えてしまいます。 だから、もしも救急隊員や警察官が高くうわずった声で「大丈夫ですか!」と叫んでいたら、怪我人や患者さんはますます不安になり、興奮状態から抜け出せなくなってしまうでしょう。彼らが落ち着いた低い声で話すのは、しっかりと意味があってのことなのです。 コロンビア大学の心理学者、ウィリアム・アップルは40名の男子学生を対象に、声の高さによって人が受ける印象がどのように変化するかについて、次のような実験を行っています。 まず、社会問題を論じたテープを用意する。そしてこのテープに吹き込まれた声を機械的に操作して、低い声、普通の声、高い声の3種類に分け、それぞれ学生たちに聞かせた。もちろん同じテープを操作しただけですから、違っているのは声の高さのみで、話の内容、話のペース、声の質は同じです。 すると、低い声で話すほど信頼性が高まることが明らかになりました。またこの実験では、高い声で話すと、信頼性がなく、共感できず、無能で神経質、という評価を受けることも分かったようです。 確かに、ドキュメンタリーなど真面目な番組では声の低いナレーターさんを採用することが多いです。そのほうが落ち着きがあり、説得力があるということです。甲高い声のナレーションが入ったら、どうしても安っぽく感じるでしょう。 低い声で話すようにすれば、相手の気持ちを落ち着かせることができます。そしいて自分の話に説得力が加わり、知性までも感じさせることができます。 つまり低い声で話すだけで、「なんかすごいことを言ってる」ように思われるのです。大物にとって、低い声でのトークは必要不可欠な自己演出なのです。 声の高低は生まれつきのものだからどうにもならない、と思う人もいるかもしれませんが、これはボイストレーニングによって克服が可能です。 自分の声は自分では確認しづらいので、一度、本を朗読する自分の声を録音するなどして声の高さを確認してみるといいでしょう。 |
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