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「言葉」で相手を誘導する高等戦術T(5記事)





説得の基本「アリストテレスの3原則」


説得するには、「論理・感情・人間性」の3原則を常に意識することが大切で、自分の人間性を「信頼できると思わせる」のも、大事なテクニックです。

★ 人を説得するには「論理・感情・人間性」の3つの要素が必要


人を動かすためには、相手を「説得」する必要があります。「どうやれば人を説得できるか」という方法論は、古代から大きなテーマでした。そんな「弁論術」を体系化し、後世に大きな影響力を与えたのが、アリストテレスです。古代ギリシャの哲学者です。

アリストテレスは、人を説得するには次の3つの要素が必要だと説きました。
@ ロゴス(論理)=人を説得するには論理的でなければならない。
A パトス(感情)=人を説得するには感情に訴えなければならない。
B エトス(人間性)=人を説得するには信頼される人間性を持たなければならない。

説得には、このアリストテレスの3原則を常に意識することが極めて重要です。

@は相手側のメリットを理屈で訴えればいいので、比較的取り入れやすいはずです。

Aは、たとえば、「返報性の法則」を活用し、何かをしてあげることで、相手に貸しを作る方法が当たります。

Bは「好意の法則」がまさにそれです。好きな人とは「信じられる人」だからです。また、「社会的証明の法則」にもBのエトスの要素があります。

本来は自身が信頼される人間性を持つべきですが、「相手にそう思い込ませる」か「信頼性のある人に威を借りる」ことで、エトスによる説得を説こうさせるのも「ブラック心理術」の醍醐味と言えるでしょう。


声のトーンや話すスピードも武器に


意識して声のトーンを下げ、「低めの声」で説得力がアップし、高齢者と話すときは、スピードを下げてコントロールすることも必要です。

★ ハイトーン過ぎる声だと説得力が下がってしまう


「言葉」で相手を動かしたいのなら、ないようにもまして重要なのは「声」です。魅力的な声質の持ち主はそれだけで有利なのですが、「声」を意識することで、誰でも説得力のある話し方をすることは可能です。

まず、ボソボソと小さい声で話したのでは、どんなに素晴らしい内容でも伝わりません。「声の迫力」で相手に訴えかけるような「大きな声」がベターです。ただし、「怒鳴り声」や「不快なほどの大声」では逆効果です。

また、「ハイトーン」な声も説得には不利だといわれています。高すぎる声は聞き手への印象が悪く、説得力が下がるといわれているため、男女ともに「低めの声」のほうが好まれるのです。ちなみに、過去のアメリカの大統領選挙で候補者の声を分析したデータでは、声の低い候補者のほうが高い得票率を得たという結果が出たそうです。

話すスピードは、プレゼンのような場ではややスピーディーに話したほうが内容が伝わりやすいといわれ、効果的ですが、相手の年代によっても異なります。高齢者になると、どうしても若い人より聴力や理解のスピードが落ちるため、早口で話されると、話の内容を理解しにくいものです。したがって、相手が高齢者の場合は、ゆっくり話したほうが効果的なのです。ともかく、声のトーンとスピードを変えるだけでも大きな武器にできるのは確かでしょう。



ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック


★ 最初に頼みを断ると、次の依頼を断りにくくなる

「返報性の法則」は、人が「相手に借りを返したい」と思う心理です。これを応用した有名な心理術が、「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」と呼ばれるものです。

たとえば、友人から「悪いけど、50万円貸してくれないか」と頼まれたとします。なかなかポンと貸せる金額ではなく、あなたはやんわりと断りました。でも、「やっぱり無理か、そうだよな・・・。わかった。じゃあ、せめて2万円ならどうだ。貸してもらえないか?」と、再び頼まれたとしたらどうでしょう。

この場合、多くの人は2万円を貸すことにOKしてしまうようです。もし、初めから「2万円貸して」と言われたら断っていたかもしれませんが、最初に50万円の貸与を断っているだけに、相手に対して負い目ができてしまい、返報性の法則によって2度目の頼みを断りにくくなるからです。

★ 断られることを想定し、本命の依頼を取っておく

このように、相手に断られることを承知の上で、いわばダミーの依頼を最初にしておき、「相手に断らせたところで、2度目に本命の依頼をする」のが、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックです。より高度なのは、2段階ではなく、3段階の依頼にすることです。2度も断ると、返報性の法則がより強く働くので、3度目も続けて断るのはかなり難しくなるからです。

たとえば、初めてデートに誘いたい女性がいるとしましょう。普通に誘ったのでは、断られるかもしれないので、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックを活用して彼女に断りにくくさせてしまうのです。

★ 2段階より3段階にすることで相手はいよいよ断りにくくなる

まず、「オレ、クルマ持ってるんだよ。よかったらドライブに行かない?」と誘います。ふたりだけでドライブというのはハードルが高いので、おそらくはNGでしょう。

そこですかさず「そうか、じゃあディズニーランドに行かないか?」と2度目の誘いをかけます。これでOKならよし。それでもダメなら、ガッカリした表情を見せて、「・・・わかったよ。じゃあ、せめて食事につき合ってよ」と3度目のトライ。2度目も断っているだけに、彼女がOKしてくれる可能性はかなり高いでしょう。

あるいは、返報性の法則を併用し、相手に何かプレゼントをして誘うという両面作戦も有効です。通常の人なら、プレゼントを受け取った上で何度も誘いを断るのはかなり後ろめたいものですから。

ただし、このテクニックを使うなら3段階が限度です。3度以上断ると、もう断り慣れてしまって、断ることに抵抗を感じなくなるからです。そして中には、相手の頼みをどれだけ断っても平気という人もいます。そんな「面の皮が厚い」タイプには、このテクニックはもともと通用しないので注意しましょう。


フット・イン・ザ・ドア・テクニック


誰でも応じやすい軽い要求から段階的にレベルをあげることが大切で、要求のレベルを一気に上げすぎないのがコツ。

★ 小さい要求をしてから段階的に本命の要求へ導く

「一貫性の法則」を応用したテクニックを使います。「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」とは逆に、最初に小さな要求をして「YES」を引き出し、2度目の本命の大きな要求をするというものです。

多くの人は、一度相手の要求をOKしているので、次に断ったら一貫性が崩れてしまうと考えるのです。心理学では「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と呼ばれています。「片足をドアに入れることができれば、相手はドアを閉めることができなくなり、追い返されることがなくなる」という訪問販売の手法が語源です。

一例として、会社の部下に資料の修正を命じる場合、まず「A社の資料を見せてくれないか?」と頼み、渡された資料に目を通します。次に「ここが、ちょっとわかりにくいんだけど、教えてくれないか?」と質問します。

それで部下に回答させてから、「なるほど、それでやっとわかった。でも、この資料はこのままでは問題があるな。悪いけど君が作り直しておいてくれないか?」・・・という流れにすれば、スムーズに資料の修正を命じることができます。

このテクニックは、最初の要求が気軽に応じることができる軽微なものであることがポイントで、次の要求を飛躍させすぎないのがコツ。
「100円貸して」の次に「5万円貸して」といわれても、簡単に応じる人は滅多にいないはずですから。


無関心な相手には「アンチ・クライマックス法」


短気な人や合理的な人には、アンチ・クライマックス法を、相手がしっかり聞いてくれそうな時はクライマックス法で攻めよう。

★ 本題に入る前に関心が薄れないようにするために使う


いわゆる「前フリ」という前置きの話を先にしてから。本題に入っていく説得話法を心理学では「クライマックス法」と呼びます。ただ、これは相手があなたに関心を抱いていて、話をしっかり聞くというスタンスの場合のみ有効です。この話法の弱点は、前段の話をしている間に相手が聞き飽きるリスクがあり、本題に入る前に関心が薄れてしまいがちになる点にあります。

そこで、相手がこちらの話にあまり関心を示していないような場合では、「アンチ・クライマックス法」を使ったほうが有効です。これは、話の冒頭でいきなり核心の部分を伝える話法です。

相手が無関心でありそうな場合だけでなく、短気な性格だったり、論理的で合理的に物事を捉えたりするタイプであった時には、アンチ・クライマックス法を使うべきでしょう。

プレゼンの場では、通常はクライマックス法のほうがベターですが、聴衆があまり集中していないようなら、あんた・クライマックス法に切り替えることも必要です。競合プレゼンなどで複数社が続けて提案を行うような場合だと、アンチ・クライマックス法のほうが有効なこともあります。

ちなみに、男性同士の会話ではアンチ・クライマックス型が多く、女性同士の会話ではクライマックス法が多いようです。





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